占星術に於ける太陽の意味は『アイデンティティー(自分を自分たらしめる要素)』ですが、正確には『自分を自分として完成させるために必要な要素』になります。
ホロスコープの中で自分自身を表すハウスは1ハウスでルーラーは火星ですが、太陽もまた自分自身を象徴する天体です。
わたしは占星術を始めたばかりの頃、これが疑問だったんです。
「太陽が自分自身なら1ハウスのルーラーは太陽の方が収まり良くない?」と思っていましたが、1ハウスのルーラーが火星であることには意味があります。
それは【自らの意思に従って行動すること(火星)がアイデンティティー(太陽)を見つけ出すために必要な力である】ということ。
【火星=積極的・能動的に自己の在り方を模索すること(1ハウス・牡羊座)で、太陽=これが自分自身だと堂々と表現出来る自己(5ハウス・獅子座)に至る】
※ 火星から太陽への流れは、黄道十二宮(全てのサイン)をナチュラルハウスとルーラーで見た場合の火のトラインの流れです。
太陽というのは“そうである自分”ではなく“そうなっていく自分(獲得していくべき自分自身)”なのです。
この自己の在り方を模索するプロセスの行動に関して「何かを決めてから行動する=目的や目標を達成するための行動」が、太陽に至る道を阻む場合があります。
牡羊座というサインは自分の意思がハッキリしており(但しそれは直感や好き嫌い等の思考を介さない感覚的なもの)、自分の感じたものに対して素直なので“自分がこう思ったらこう”という頑固さを持ち合わせ、自分に忠実に行動しようとします。
※牡羊座にキロンや土星がある場合は、これらの行動が出来ないorこれらの行動が行き過ぎてマイナスに出ます。
しかし牡羊座は12サインのはじまりであり、まだ自分をちゃんと知らない(自分から見た自分という一つの側面しか知らない)のです。
自分を客観的に見る視点(他者から見た自分という側面)は反対側の7ハウス・天秤座の領域ですから、牡羊座の段階ではどうしても自分を客観視する視点に欠けます。
つまり、自分で自分を決めつけてしまう所があるのです。
1ハウス・牡羊座の視点は、あくまでもセルフイメージであって自分が自分で自分だと思う自分です。
(自分はこれが出来て欲しいという自分に対する要求でもあります。)
しかし8ハウスの記事でも説明したように、自分から見た自分・自分がこうしたい(エゴ)からの行動のみでは上手くいかないことが多くなります。
(8ハウス・蠍座のサブルーラーが火星なので1ハウスとの繋がりが生まれます。)
『行動(意思決定)の結果を精査する』視点を持つこと。
行動は何かを達成するためだけでなく「(次の)意思決定を行う判断材料を集める=目的や目標(太陽)を見つけるためのものでもある」という柔軟さを身に付けることが非常に重要になります。
これが出来ないと判断材料に乏しくなるので、なかなか決められずに行動が出来なかったり、一度決めたことへの軌道修正が難しくなります。
牡羊座か1ハウスにライツやキロン・土星があると「決められないor軌道修正が出来ない」どちらかの傾向が出やすくなりますが、これはサインの性質から人間の行動傾向のパターンについて考察したものなので、牡羊座や1ハウスに天体がある人に限った話ではありません。
牡羊座は試行錯誤を要求されるサインですが、必要になるのは【目的や目標を達成するための試行錯誤ではなく、目的意識を固める(太陽に辿り着く)ための試行錯誤】です。
ハウスで説明すると、目的や目標を達成するための試行錯誤というのは1ハウスから10ハウスに行こうとしている感じです。
1ハウスと10ハウスの関係性はスクエアですから、エネルギーが上手く流れません。
トラインの関係性になる1ハウスから5ハウスにエネルギーを流す必要があります。
但し、火のトラインの流れだけだと自我(エゴ)が強調されすぎてバランスが悪くなります。
1ハウスに対してクインカンクスの関係性である6ハウスと8ハウスを挟むと、オポジションの7ハウスが育って5ハウスのバランスが取れます。
※クインカンクスは異なる性質を取り込み元々持っていない要素を後天的に身に付けていくアスペクトです。
自分の意思決定と行動を求められるものに寄せることも覚える(6ハウス)
無理矢理に進んで行こうとせず、流れを受け入れることも覚える(8ハウス)
受容=需要です。
下記リンクは、受け入れることで自らの需要を知ることの大切が分かります。
この中の高校球児の話が、正に1ハウスから10ハウスに行こうとしている例です。
時に火星は自我を暴走させる天体でもあります。
それは自分が思う自分(=自分が守りたいもの)を守るためでもありますが、自分が思う自分と他者が思う自分のズレの大きさによってはスクエア(10ハウス)に向かいます。
6ハウスや8ハウス的な要素を獲得出来ると「どうしたいか」という主観的な視点からのみではなく、自分を客観的に捉える視点(7ハウス)が育って1ハウスが強化され、1ハウスが強化されればそれは5ハウスにも影響を与えますので、ただ自分が表現したい自分を表現するのではなく、社会と調和の取れた自己表現として昇華されます。
☝︎上のリンクを読んでからこの段落を読んでもらえると多分理解度変わります。
そうなった時に、“なんのために生まれて、なにをして生きるのか”という1ハウス・牡羊座の本質的な自分自身に対しての究極の問いに答えが出るのです。
そうして人生の意味や目的が明確になると自己表現に迷いが無くなり、その人の“輝き(太陽の光)”が増していきます。
獅子座(ルーラー太陽)のキーワードは「I will」短縮系にすると「I’ll」です。
短縮系なので勿論「わたしは〜するつもりです」という意味は同じですが、ネイティブはニュアンスを使い分けるそうです。
“状況に関係なく(絶対に)こうする”というのが「I will」で“状況に応じて「こうする」という意思を示す”のが「I’ll」。この「I’ll」が必要なんです。
そしてwillは未来に対する意思なので「そのつもりだけれど、まだ確定(実現)していない事柄」に対して使う言葉です。
つまり『自分はこうしたいという意思は状況に応じて変えていく必要があり、その結果として見つかるのが太陽(「わたしは〜するつもりです(強い意志を示す)」という目指すべきもの)』なんです。
牡羊座 I am「わたしは〜です」
獅子座 I will「だからこうするつもりです」
これを貫こうとしてしまうと射手座の I understand には繋がりません。
I will ⇒ I’ll「こうするつもりでしたが、こういう状況なのでこうします」
「こうしてみましたが、結果こうなったのでこうします」
に変えると、I understand「わたしは理解する」が訪れる訳です。
ここで訪れる理解は自分の限界かもしれませんし、自分の新しい一面かもしれません。
この理解があるからこそ、等身大の I am (自分が自分で自分だと思っている思い込みの自分ではなく本当の自分自身)が明確になるのです。
自分からの視点onlyではそこには辿り着けません。
しかし牡羊座や1ハウスの性質が強く出ると、その究極の答えを自分の視点だけで探そうとして答えの出ない迷宮に迷い込むことがあります。
そのサインの問いに関する答えを導き出すためには、必ず反対側のサインの性質が必要です。
「決めるため(判断材料を集めるため)の行動をしない」ということは、神経衰弱を最初のターンで成功させようとするようなものです。
大きな決断になればなる程、判断材料なしに当てるのは無理ゲーです。
決めるためにとりあえずカードを捲ってみる。
人生の大きな決断は、そう何度も繰り返せるものではありません。
だからこそ、出来る範囲でカードを捲って判断材料を集め、これとこれだなって確信が得られたらカードを当てに行く。
沢山の選択肢の中から、より最良の選択肢を選び取ろうとすればする程「決めるための行動」が大事になるのです。
捲った中で揃ったペアのカード(確信)を沢山持っていれば持っているだけ“自分を知っている”状態になる。
1ハウス・牡羊座の時点では、まだペアのカードを所有していないんです。
だから、1ハウスは自分自身を表す場所ですがルーラーはペアを見つける力を持つ火星であり、太陽は自分自身を表す天体ですが“そうであるべき(獲得していくべき)自身の在り方”であって“そうである自分”ではないのです。
1ハウスのルーラーが火星であることは、意思決定と行動の結果、自分自身の在るべき姿が明確になっていくのであって、最初から自分自身が明らかになっている訳ではないということを示しています。
【アイデンティティー(太陽)とは、何かを目指すこと(その時の手応え)によって判断材料を集め、試行錯誤をすることで確立していくものであり、そのためにはまず自分の意思に従って行動する最初の一歩(火星)が必要である】
(仮)の目的や目標で行動して、判断材料を得たら軌道修正をしていく。
一度決めた自分の気持ちを元に迷いなく真っ直ぐに進んで行くことが出来る状態に至るまでには、目的意識(太陽=本当に進むべき道)を見つけ出すための試行錯誤が必要になることが殆どです。
自分の想いをコントロールして真っ直ぐ進もうとする人が結構いるんですが、脇目も振らず一心不乱に自分の道を進んで行く人は迷いをコントロールしながら進んでいる訳ではありません。そもそも迷いが無いんです。
迷いが出るのであれば、必要なのは迷いをコントロールすることではなく自分の想いに向き合うこと。
自分が求める自分に出会うプロセスは、自分の想いを決めつけて一直線に向かっていくものじゃなくて、その都度自分に向き合って、想いを確認したり、必要に応じて軌道修正をしながらジグザグに辿り着くものです。
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